冬になると体調を崩すことが増えますね。
風邪やインフルエンザになったり、
冷えて関節が痛くなったり、
雪が降った日に路面で転んでけがをしたり。
これはワンちゃんやネコちゃんも同じで、
冬になると背中や腰を痛める子が増えます。
寒いと筋肉がこわばり、
思わぬ動きでも怪我や疾患を発症しやすくなるのです。
その一つが「ヘルニア」です。
犬種によってはとても多く、
お悩みが多い疾患ですが、
冬に特に発症しやすくなるそうです。
今日はその「ヘルニア」について、
どのように付き合っていけばよいか勉強していきましょう。
ヘルニアってどんなもの?
人間でもヘルニアの方は多くいらっしゃいますよね。
ヘルニアというと、腰痛を思い出しますが、
そもそもこの言葉、どのような意味なのでしょう?
ヘルニアとはヘルニアはラテン語の「hernia」に由来する言葉で、
「飛び出す」「突出」「膨らみ」を意味しており、
臓器や脂肪などの体の構成物が、
何らかの原因で本来あるべき位置から飛び出している状態を指します。
飛び出しているものを容易に元に押して戻せる状態のものを
「環納性(かんのうせい)ヘルニア」といいます。
元の状態に戻らなくなったものを「嵌頓(かんとん)ヘルニア」といいます。
嵌頓ヘルニアになると血行阻害や通過障害を起こし、
臓器が壊死することもあり大変危険です。
ヘルニアには椎間板だけではなく、
いろいろな種類があります。
横隔膜(おうかくまく)ヘルニア | おなかの中にある横隔膜が破れて腹部臓器がはみ出してしまった状態 |
臍ヘルニア(でべそ) | 腹部の組織がへそから飛び出してしまった状態 |
鼠径(そけい)ヘルニア | 腸管が後ろ足の付け根に当たる部から鼠径部から飛び出してしまった状態 |
ワンちゃんの場合最も多いのが
「椎間板ヘルニア」です。
脊椎(せきつい)の椎体間には
「椎間板」というやわらかい組織が存在して、
骨と骨とのクッションの役割を担っています。
また、それぞれの椎体を連結して
背骨の動きを滑らかにしています
椎間板ヘルニアとは、その椎間板が変性して突出し、
脊髄を圧迫することで起こる病気です。
腰が痛いというイメージがありますが、
首に起きることもあります。
犬の椎間板ヘルニアには
急性(Ⅰ型)と慢性(Ⅱ型)があります。
急性(Ⅰ型) | 慢性(Ⅱ型) | |
年齢 | 比較的若い犬に多い | シニア犬に多い |
進行 | ある日突然何らかの原因で発症 | ゆっくり緩慢に進行 |
原因 | 椎間板の中身が飛び出す | 厚くなった椎間板が神経を圧迫する |
症状 | 急に歩けなくなったりふらついたり | 慢性的だが ちょっとした転倒や転落で悪化することがある |
椎間板ヘルニアは、進行度合いによってグレード分類されます。
進行度合 | 状態 | 症状 |
グレード1 | 麻痺はなく軽い痛みだけ | 抱っこしたときに痛みでキャンと鳴く、段差の上り下りを嫌がる、背中を丸める |
グレード2 | 麻痺はなく痛みだけ | 足の力が弱くなり、足先の感覚が鈍くなる 歩くときにふらつく、足先がひっくり返る |
グレード3 | 軽度の麻痺が起きる | まだ自力排せつができる 足先には感覚がありつねると反応する |
グレード4 | 麻痺が強くなり浅部感覚がなくなる | 自力排せつが難しくなる 足先の感覚がなくなりつねっても反応しなくなる |
グレード5 | 麻痺が強くなり深部感覚もなくなる | 自力排せつができない 足先の感覚は完全になくなり何をしても気づかない 回復率が著しく低くなる |
進行してしまうと最終的には寝たきり状態になり、
自力排せつも、歩行もできなくなる恐ろしい病気なのです。
なぜヘルニアが発生するの?
ではなぜヘルニアが発生するのでしょう?
それには体の内部構造が関係しています。
普段あまり意識していないと思いますが、
体内にある各々の臓器や骨格は
筋肉や膜によって正しい位置に保たれています。
その支えがなければ
簡単に位置がずれてしまうのです。
しかし、臓器や骨格を支える筋肉や膜に
先天的に異常があったり、
後天的な原因(事故や酷使、老化など)により
膜に穴が開いてしまったりすると、
そこから広がったり裂けたりして
中身(!)が飛び出してしまうのです💦
犬の椎間板ヘルニアの治療には
内科的療法と外科的療法があります。
内科的療法 | 外科的療法 | |
対象 | 比較的症状の軽い子 脊髄の圧迫の軽度な子 | 多くの場合 |
内容 | 4~6週間のケージレスト(積極的安静) SAIDS(非ステロイド系消炎鎮痛剤)またはステロイドの内服 その他薬物、レーザーなど | 手術で原因となっている 椎間板物質を除去する |
ケージレストとは聞きなれない言葉ですが、
トイレに行く以外は絶対にケージの中から出さない!という
強力な安静です。
人間でいう「絶対安静」ですね。
閉じ込めてはかわいそうだから…とケージから出してしまうと、
せっかく落ち着いた椎間板物質がまた飛び出してしまって
症状が悪化する可能性があります。
おうち療養の際は注意が必要ですね。
多発しやすい犬種
椎間板ヘルニアになりやすい犬種には、
以下のようなものがあります。
- ダックスフンド
- ミニチュア・ダックスフンド
- トイ・プードル
- コーギー
- フレンチ・ブルドッグ
- パグ
- ペキニーズ
- シー・ズー
- ビーグルなど
これらの犬種は軟骨異栄養性犬種と呼ばれ、
遺伝的に椎間板ヘルニアを起こす危険性が高いと言われています。
若齢で椎間板髄核が変性しやすいため、椎間板ヘルニアになりやすいのです。
ヘルニアには先天性と後天性があり、
先天性のものには鼠経ヘルニア、横隔膜ヘルニアなどがあります。
先天的に鼠経ヘルニアを起こしやすい犬種には、
ペキニーズ、ゴールデン・レトリーバー、
コッカー・スパニエル、ダックスフンド、バセンジーなどがあります。
好発犬種の子と暮らす飼い主さんは、
リスクを知っておくと
予め日頃の生活に気をつけておくことができます。
なぜ冬に多発するの?
ワンちゃんのヘルニアは、
冬に発症が増えると言われています。
これには理由があります。
先述のとおり、筋肉や膜が
体の中で臓器や骨格を安定させていますが、
冬、寒さで筋肉がこわばり、
関節の動きが制限されてしまうと、
ちょっとした衝撃でも
椎間板に影響が出やすくなるのです。
先日、友人から
昔飼っていたワンちゃんの思い出話を聞きました。
友人が子どものころ、
ご家族で大きなセントバーナードの女の子を飼っていたそうです。
その子はそろそろシニア犬に達する年齢でしたが、
前の飼い主が何らかの理由で飼い切れなくなり、
譲渡を受けて飼い始め、
新しい家族に囲まれて幸せな余生を送っていました。
その子はセントバーナードらしく、
冬の寒さが大好きで、
雪が降ると興奮して走り回る子だったのですが、
雪の降った冬の日、庭に出したところ、
いつものように喜んで急にダッシュして、
滑ったらしく姿勢を崩し、
前足から野球のスライディングのように滑り込みました。
地面が凍っていたので、
滑ってしまったようです。
そしてその場から動かなくなってしまったので、
駆け寄って見たところ、
ワンちゃんは体の力が入らず
自力では立ち上がれなくなっていたそうです。
痛い…痛い…と訴えるようにクンクン鳴いていたので、
なんとかみんなで保護して家の中に連れ帰りましたが、
それきり寝たきり状態になってしまいました。
当時、車を運転できる人が、
お父さん以外にいなかったので、
子供たちとお母さんだけでは、
すぐ病院に連れて行くことができませんでした。
お父さんは仕事の関係で、
毎日家に帰ってくるのは深夜。
数日後のお休みに
病院に連れていったときには
「首のヘルニア」と診断されました。
滑った時に首に全体重がかかったのかもしれません。
でもその時にはもう手遅れで手術をすることもできず、
回復が望めない状態になっていたそうです。
そのまま寝たきりで入院、
しばらく頑張ったのですが、
病院で亡くなってしまいました…。
子供たちはまだ小さかったので、
親にそれを知らされたのは随分後のことで、
知った時にはとてもショックを受けたそうです。
悲しい話ですが、
ヘルニアの予後について、
大切な教訓が含まれていると感じましたので、
ご紹介しました。
急性はすぐに病院へ!
エピソードからの教訓は2つあります。
教訓①「急性ヘルニアのような状態になった場合、
一刻も早く病院に連れていくこと!」
「少し待てば良くなるのでは…」
「一晩様子を見よう…」は禁物です!
色々な事情があったとしても、
とにかくできるだけ早く病院へ連れていきましょう。
放置し続け、麻痺した状態が続き、
神経の細胞が一度破壊されてしまうと、二度と再生することがないからです。
椎間板によって圧迫されると2~3日で神経細胞は死滅してしまいます。
今、再生を可能にしようと「再生医療」の研究がされていますが、
まだ十分に実用化されているとはいえません。
また椎間板ヘルニアで脊髄が損傷すると、
脊髄の融解壊死が起こることがあります。
「進行性脊髄軟化症」といいます。
進行性脊髄軟化症は、脊髄の神経細胞が末端から壊死して行き、
呼吸をするための神経も麻痺するため、呼吸ができずに亡くなることがほとんどです。
どんなにつらく苦しいことでしょう。
ヘルニアの診断、治療が遅れて良いことは何もありません!
すぐに病院に連れてゆきましょう!
教訓②「雪国の冬のツルツル路面は、
犬でも滑るので気をつけること!」
雪国の冬のツルツル路面は、
ワンちゃんの足にも負担が多く、
それだけでも関節や筋肉、骨格に負担がかかります。
私たち人間は冬靴を履けば滑ることが減りますが、
靴を履かないワンちゃんは
夏靴でツルツル路面を歩いているようなものなのです。
想像しただけでおっかないですよね。
お散歩コースはなるべくツルツル路面になる場所を避けましょう。
人間が通る道でも日陰になる場所では、
朝方、夕方など凍っている場所があるので危険です。
後述しますが滑りにくい冬靴(スノーブーツなど)もあるので、
履かせてあげるとワンちゃんの足の負担が軽減されますよ。
ヘルニア発症を防ぐために
ここまで読んでくださって
「うちの子、もしかしたらヘルニアかも…」
「今は大丈夫だけど、ヘルニアになりやすい犬種だと知った」という方、
椎間板ヘルニアの発症や悪化を防ぐために
年に1~2度の健康診断を受診するとともに、
以下のようなことに気をつけましょう。
肥満を防ごう!
肥満気味だと脊髄への負担がかかりやすいため、
体重を適切に管理しましょう。
太りすぎの子には簡単で栄養不足にならないい
「酵素ダイエット」がおすすめです。
詳しい方法はブログをご覧くださいね!
【ブログ】ヘルシーに痩せよう!ぽっちゃり犬・ぽっちゃり猫のダイエット
【ブログ】ペットの肥満が増えています。正しいダイエットで健康に!
関節や骨格の健康を高めよう!
関節や骨が弱っていると、
ヘルニアのリスクが高まるのはもちろん、
シニアになると骨折しやすくなります。
カルシウム・ミネラルサプリや、
サメ軟骨から作ったⅡ型コラーゲンサプリで、
骨や関節を丈夫に保ちましょう。
雪道の散歩には靴を!
雪道をお散歩させる際は、
滑って足腰に急な負担がかかり、
ヘルニアが悪化することがあります。
ツルツル路面のお散歩を避けるのはもちろん、
犬用のスノーブーツを履かせてあげるのもおすすめです。
滑り止めや防水、保温機能のついているものが
販売されていますので、
体格に合わせたものを選んであげましょう。
背骨に負担のかかる運動や姿勢に注意!
ソファやベッドからの飛び降りなど、
背骨に大きな負担がかかる運動を避けましょう。
また抱っこするとき、
上半身だけをしっかり抱いて、
下半身をフリーにしておくと腰に負担がかかります。
体全体を包み込むようにしっかりとホールドしてあげましょう。
ヘルシーアニマルズでお取り扱いしている
「アニマルバランスバンド」「パワーバンド」は
鉱石の力を利用したペット用健康器具です。
不思議ですが、
体に装着するだけでヘルニアや歩行の悩みが改善された例がたくさんあります。
そうそう、先日テレビ番組でも紹介されていた
「DENBA」という技術をご存じでしょうか?
元々、食品の鮮度保持のために利用されていた
超低周波を生かした技術を
健康器具に転用している製品です。
ヘルシーアニマルズの関連会社は、
飲食事業を行っているので、
衛生管理のため長年こちらの製品を利用してきました。
「DENBA Health」では
人間が座ったり寝たりできるマットが人気なのですが、
ペット用の商品(DENBA Pet)もあります。
寝るだけでヘルニアや足腰にお悩みのワンちゃんネコちゃんが
使用によって改善された例がたくさんあるようです。
https://denba.co.jp/denbahealth/
ご興味をお持ちの方は
ヘルシーアニマルズまでお気軽にご相談ください。
筋肉や関節を温めよう!
体が冷えていると筋肉がこわばって
関節の動きが制限されてしまい、
思わぬ怪我をしやすくなるので、
内側から温かい体づくりをしておくことも
予防には大切です。
「ペット鍼灸」「光エステ」などで
体のメンテナンスを受けておくと、
ヘルニアの早期発見や症状緩和にもつながります。
ミニチュアダックスのはなちゃんは、
ペット鍼灸を受ける前のレントゲン検査で
意識していなかったヘルニアが見つかり、
施術を続けるうちに背骨の湾曲が改善されていました。
【参考リンク】【ペット鍼灸・光エステ愛用者インタビュー②】はなちゃん7歳「気づいたら色々快調です!」
ワンちゃんのヘルニアは、
発症してしまうと歩行に影響があり、
そのうち麻痺も進行し、
生活の質が落ちる病気です。
正しい知識と対策で、
まずは発症させないように、
万一発症したとしても進行させないように、
しっかりブロックしていきましょう!