あっという間に夏になりました。
札幌でも暑い日が続いています。
本州のほうではすでに40度近い気温を記録した地点もあるとか…
飼い主の皆さまも、愛犬・愛猫さんたちも体調にご注意くださいね。
熱中症にならないためにはこまめな水分補給も大切です。
しかし、ワンちゃんの多飲には思わぬ病気が隠れていることがあります。
「愛犬がこの頃異常にお水を飲む」
「おしっこの量が半端ない」という場合、
暑さの影響だったり、老化現象の場合もありますが、
実は糖尿病の初期症状という場合もあるのです。
そこで今回は「犬の糖尿病」についてのお話をお届けします。
猫ちゃんにも糖尿病はあるのですが、今回はワンちゃんの場合を掘り下げますね。
犬の糖尿病とは?
糖尿病は脾臓のランゲルハンス島という細胞群で作られるインスリン(血液中のブドウ糖を細胞内に取り込み、エネルギー源として利用されることを促進するホルモン)が不足したり、
うまく働かなかったりすることが原因で、血糖値や尿糖が持続的に高くなる病気です。
血糖値が異常に高くなるということは、
細胞に必要とされているエネルギーが十分に行き渡らないということです。
また、持続的な高血糖によって血管や内臓にも影響を及ぼし、様々な合併症が引き起こされます。
「糖尿病」という名前から、尿に糖が出るということは甘いものの食べすぎでは?
乱れた食生活の結果起きる病気なのでは?など、
誤解されていることも多い病気ですが、
遺伝や免疫異常で引き起こされることも多いのです。
ワンちゃんの場合も同様です。
ワンちゃんの場合、人間と発症の仕組みは同じですが、原因によって2つの型に分けられます。
①Ⅰ型糖尿病(インスリン欠乏性)…犬に圧倒的に多いタイプ
脾臓からのインスリン分泌が不足していることで発症するタイプです。
ワンちゃんには圧倒的に多い型です。
中齢から高齢の犬で多く見られます。
自己の免疫が膵臓のインスリン分泌細胞を破壊していること(自己免疫性)によるものが多く、
治療にはインスリンの投与が必要になります。
これは先天的な要因や、膵炎、免疫異常などが原因と考えられています。
②Ⅱ型糖尿病(インスリン抵抗性)…犬には少ないタイプ
インスリンは分泌されていても、何らかの原因で十分に働いていないことで発症するタイプです。
ワンちゃんには少ないタイプです。
こちらは肥満や生活習慣、ストレスなどと大きな関連があり、
治療にインスリンの投与を必要としないこともあります。
そのほか、他の基礎疾患の合併症として糖尿病になることもあります。
例えばクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)です。
クッシング症候群とは、犬の副腎皮質が過剰に活動し、
コルチゾールと呼ばれる内分泌ホルモンを過度に産生する病気です。
その結果糖尿病も併発することがあります。
クッシング症候群の発症原因は、
腫瘍や副腎皮質の肥大化、脳下垂体の問題です。
糖尿病の初期症状~異常に水を飲む
糖尿病の初期症状には以下のようなものがあります。
- 多飲
- 多尿
- 体重減少
高血糖になると、なぜ多飲多尿になるのでしょう。
それは血液中の糖分が多くなると、浸透圧の関係で細胞内の水分まで血管中に引き出されてしまうからです。
その結果、腎臓は血管内に増加した水分を尿として排泄するので尿が多くなります。
一方、細胞は水分不足になるので、体が失われた水分を求めてまた多飲になるというサイクルです。
犬の1日の適正な飲水量は、体重1キロあたり100mlと言われています。
体重10キロの犬の場合、1リットルが目安です。
1日2日だけならまだしも、しばらくそんな状態が続く場合、
即、病院に連れて行ってあげてください。
糖尿病ではなくても、腎臓病かもしれません。
糖尿病の場合、腎臓病より進行が速いのも特徴です。
急に多飲多尿になった場合、糖尿病の疑いがあるので、
一刻も早く連れていきましょう。
多飲多尿に加えて、食欲はあってたくさん食べているのに
体重が減少していくというのも糖尿病の特徴です。
なぜならエネルギー(糖分)が細胞に十分に行き渡らないからです。
初期の状態では、食欲があってワンちゃんも元気なので大変気づきにくい病気です。
早期発見するためには、日ごろからワンちゃんの飲水量や尿の量、
体重の変化をよく観察してあげましょう。
引き起こされる合併症
糖尿病によって高血糖状態が続くと、以下のような合併症を引き起こしやすくなります。
- 白内障
- 感染症
- 腎臓病
- 糖尿病性ケトアシドーシス
ワンちゃんの場合最も多いのが「白内障」です。(糖尿病性白内障)
糖尿病になるとほとんどの子が発症するともいわれ、進行のスピードが速いのも特徴です。
高血糖が続くと、目のレンズ部分である「水晶体」に糖分などが蓄積し、代謝を妨げることで水晶体のたんぱく質が変性し、白内障が発症します。
また糖尿病になると免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。
高血糖が続くことで腎臓にもダメージがあるので腎疾患も起きやすくなります。
「糖尿病性ケトアシドーシス」とは、糖尿病で引き起こされる合併症の中でも致命的なものです。
糖尿病によって細胞の糖代謝が悪くなるため、脂肪をエネルギー源に使い始めます。(その結果体重が減少します)
すると脂肪が分解されることで、中間代謝の産物であるケトン体が増加します。
ケトン体は通常血中に存在する物質ではなく、過剰に増加すると以下のような症状が現れ、
その結果命に関わることもあります。
- 衰弱
- 食欲不振
- 嘔吐
- 下痢
- 元気消失
糖尿病になりやすい子は?
糖尿病の好発犬種は、以下となっています。
これには遺伝的な要因が大きいと考えられています。
- トイプードル
- ヨークシャーテリア
- ミニチュア・シュナウザー
- ビションフリーゼ
- ミニチュア・ピンシャー
- ジャックラッセルテリア
その他、メスはオスの2~3倍のリスクで糖尿病になりやすいということも知られています。
これは女性ホルモンの一つであるエストロゲンが、インスリンの作用を減弱させる働きを持っているからです。
避妊していない女の子が中高齢になった場合、よく気をつけてあげましょう。
糖尿病の治療
糖尿病の治療は、インスリンをコントロールすることになります。
犬の場合、Ⅰ型糖尿病が多いので、ほとんどはインスリンの投与を伴います。
インスリンの投与は注射で行います。
インスリンには複数の種類がありますので、効果を確認しながら治療を進めていきます。
通院治療の場合、飼い主さんが動物病院の指導のもとで、お家で毎日注射してあげることが必要になります。
また糖尿病性ケトアシドーシスの状態になっている場合は、
厳密な管理の元での治療が必要になりますので、入院が必要です。
人間の場合は、食事制限が必要になることがありますが、
ワンちゃんの場合専用の療養食もあります。
血糖値が急激に上昇しないように糖質を控え、食物繊維を多く配合するなど工夫されています。
またⅡ型糖尿病の場合、減量用の療養食を使うこともあります。
糖尿病は長く付き合う病気
今まで書いてきたように、ワンちゃんの糖尿病の多くはⅠ型ですので、
遺伝的な要素も多く、発症を予防することは難しいです。
またワンちゃんの場合完治は難しく、生涯インスリン注射を行う必要があります。
発症のリスクを減らしたり、
もし発症しても早期に発見し、予後を良くするためには、
以下のような対策が考えられます。
①女の子の場合は、早めに避妊手術を済ませてあげる
発情前に避妊手術をしておくことで、エストロゲンへの曝露を減らし、
糖尿病発症のリスクを減らすことができます。
②好発犬種の場合、定期的に健康診断を受ける
先ほどあげた好発犬種の場合は、1年に1回、
シニア期以降は1年に2回健康診断を受け、血液検査や尿検査を受けることで、
糖尿病の傾向があればすぐに発見することができます。
③クッシング症候群など、糖尿病を併発しやすい基礎疾患を治療しておく
合併症として糖尿病を起こしやすい疾患がある場合は、治療を行いましょう。
併発すると治療がむずかしくなるので先々に治しておくようにしましょう。
④肥満を防ぎストレスを減らす
。肥満を防ぎ、ストレスを減らすことはⅡ型糖尿病の発症リスクを減らします。
食事の内容を見直し、必要な場合は正しくダイエットを行いましょう。
糖尿病に限らず、ストレスは様々な病の発症原因となると考えられています。
ワンちゃんの生活環境を見直し、ストレスを取り除くようにしましょう。
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糖尿病のワンちゃんに人気なのが、
総合栄養食「テラカニス(TerraCanis)」です。
テラカニスはドイツ・バイエルン生まれのペットフードで、
100%人間用原料を使い伝統的なお肉屋さんが作った
家庭的なホームメイドスタイルのデリカテッセ(美味しいごはん)。
良質のお肉や野菜を主な原料に作られた、バランスの良い配合の缶詰です。
人間の糖尿病の場合、糖尿病性腎症を併発することがありますので、
食生活では糖質やたんぱく質の制限を行うことがありますが、
ワンちゃんの場合糖尿病性腎症はまれですので、
基本的にはたんぱく質の制限は必要ありません。
糖尿病では、細胞内のエネルギー源が十分ではなくなるので、
変わりに筋肉が分解され(異化亢進)筋肉が減少していきます。
それを防ぐためには食事は十分な量と良質なたんぱく質が必要となりますので、
テラカニスは療養食としても大変重宝なのです。
糖尿病でお悩みの飼い主さんには、
「馬」が特にオススメです。
馬肉は低カロリー高タンパクで、
糖尿病以外にもダイエットや皮ふ・被毛対策にも良いものです。
【犬用総合栄養食】馬 テラカニス【無添加・無着色ハイポアレルジェニック】400g
糖尿病は命に関わる場合もありますが、
きちんと血糖値を管理し(今は24時間血糖値を管理できるシステムもあります!)、
合併症を引き起こさなければ長く生きることが可能ですので、
比較的管理しやすい病気であるともいえます。
発症してしまった場合でも、
多面的なケアで悪化を防ぎ、上手に付き合ってゆきましょう。