2024.01.24

 【ブログ】愛犬・愛猫の痛みに、飼い主さんが早く気づくには?

先日、お客様と話していて「ペットが感じる痛み」についての話題になりました。
人間は自分の体の痛みを言葉で表現できますが、ワンちゃんネコちゃんは言葉が話せないので、「痛い~!」と感じていてもそれを飼い主さんに伝えることができません。
飼い主さんが気づいてあげなければ、病院にも連れていってもらえないのです。

ワンちゃんが痛みを我慢していて、その結果動きが鈍くなっていても、飼い主さんが鈍感でしたら「高齢だから仕方ないわね」「少し元気がないわね」ぐらいに軽くとらえてしまうかもしれません。
その結果、症状が悪化し、病院に連れて行ったら大きな病気がかなり進行してしまっていた…という話も聞きます。
飼い主としては、病気の早期発見早期治療のためにも、いち早く痛みに気づいてあげたいものです。
そこで、愛犬・愛猫の感じる痛みについて今回は考えてみましょう!


ワンちゃんネコちゃんは弱みを隠す

ペットでもワンちゃんやネコちゃんは、野生動物時代の習性から、弱っている姿を隠したがるという話は聞いたことがありませんか?
これは本能だと言われています。
野生の世界で弱っている動物はより強い動物に狙われて餌食になるので、生きるために弱っているところを見せないようにするのです。

ワンちゃんネコちゃんはペットとして長年人間と生活しているので、野性も薄まり、人間(飼い主さん)になら安心して弱っているところを見せてくれる子も多いのですが、
獣医さんにお話を伺うと、種類や性格にもよって未だにその傾向がとても強く、飼い主さんにすらその姿を見せたがらない子もいるそうです(;^ω^)
特にネコちゃんはワンちゃんに比べて弱みを隠したがる傾向が強いそうです。


私が一緒に暮らしていたワンちゃんにも色々なタイプがいました。
寸前まで元気にご飯を食べていて、パタッと倒れてしまったので病院に連れて行ったところ、すでに慢性的な病が悪化していて「これはかなり痛かったでしょうね…」「この犬種は特に我慢強く、飼い主さんにすら見せることがない子もいますので…」と言われたこともありました。
それ以来ペットの痛みについては、基本的に飼い主にすら見せないと考え、小さな変化にも気をつけて生活することを心がけています。
皆様のワンちゃんネコちゃんは弱みを見せず、じっと我慢してしまうタイプではないでしょうか。

痛みの種類、メカニズム

改めて考えてみますが、痛みとは何でしょう?
生物が生きていく上でなぜ痛みが必要なのでしょう。

痛みとは、体が脳を通じて送るSOS信号です。
例えば病気やけがで体が損傷した場合、体を動かすと回復が遅れたり悪化することもあります。
そこであえて不快な痛みを送ることで、今は動かないで!ということを体は伝えているのです。
痛みには不調を知らせ、警告する役割があるのですね。
もしそれがなければ人間を含め動物は自らの不調に気づくことができないでしょう。

ペットに限らず、痛み(疼痛)を発生の原因や伝達方法で分類すると大まかに以下の3種類になるそうです。

  1. 侵害受容性疼痛
  2. 神経障害性疼痛
  3. 心因性疼痛

①侵害受容性疼痛

痛みは体内に張り巡らされている末梢神経を通じて、電気信号として脳に伝えられます。
末梢神経には「侵害受容器」というセンサーがあり、刺激を感知すると電気信号に変換され神経から脊髄に伝達され、脳に伝わり痛みを感じます。
この仕組みはワンちゃんネコちゃんも同じです。

侵害受容性疼痛は、末梢の侵害受容器が、熱や機械刺激によって活性化されて生じる痛みのことです。
例えばケガをしたとき。何らかの病気で炎症が起きているとき。
その部位に痛みを出す物質が発生して、侵害受容器を刺激します。
原因が分かりやすく、人間の場合はズーンとした重い痛み方が特徴です。
ケガだけではなく、頭痛や歯痛、内臓疾患、癌などの慢性疾患による痛みもこれに該当します。
特に、現代のワンちゃんネコちゃんに増えている癌。
その多くは進行すると痛みを伴うものが多いそうです。

②神経障害性疼痛

神経障害性疼痛とは、何らかの原因により神経が障害され、それによって起こる痛みです。
ワンちゃんネコちゃんでは、椎間板ヘルニアや頚椎症に伴う慢性的な痛みなどがあります。
犬種によっては、ヘルニアの子は本当に多いですよね。
痛いだけではなく、放置しておくとそれがストレスとなって、免疫が低下したり治りが遅くなったりすることもありますので、
お薬などで痛みをコントロールしてあげることも大切です。

③心因性疼痛

心因性疼痛とは、仕事や日常生活の中において、慢性的または強いストレスを蓄積することで生じる身体の痛みを指します。
ワンちゃんやネコちゃんも強いストレスを感じることで、下痢や嘔吐、脱毛、皮膚炎、異常行動などの症状が発生します。
ワンちゃんやネコちゃんの場合、痛みもストレスも言葉で表現できないので飼い主さんがいち早く症状に気づいてストレスの原因を改善していくことが大切です。

痛いときのワンちゃんネコちゃんの行動

痛みを感じた場合、ワンちゃんネコちゃんはどのような方法でそれを表現するのでしょう。
公益財団法人動物臨床医学研究所(動物臨床医学会)の「動物のいたみ研究会」では、
動物の「いたみ」からの解放を臨床獣医学の大きな使命ととらえ産学が協力して研究をされています。

痛みを隠す傾向にあるネコちゃんの表情を読みとり、AIを用いて解析するアプリを開発提供されたり、慢性疼痛のチェックリストもウェブサイトで無料提供されています。
どなたでもダウンロードできますのでぜひご覧になってください。
【リンク】動物のいたみ研究会
【リンク】慢性疼痛に関するポイントとチェックリスト

こちらの「慢性痛判定シート」では以下のようなチェック項目が挙げられています。
これらの変化が愛犬に認められたら慢性痛に苦しんでいる可能性がありますので、すぐに獣医さんに連れてゆきましょう。

  • 散歩に行かなくなった、散歩に行っても走らなくなり、ゆっくりと歩くようになった。
  • 階段や段差の上り下りを嫌がるようになったり、その際の動作がゆっくりになった。
  • 家の中や外であまり動かなくなった。
  • ソファーやいす、ベッドなどの高いところへの上り下りをしなくなった。
  • 立ち上がるのがつらそうに見える。
  • 元気がなくなったように見える。
  • 飼い主やほかの犬と、またはオモチャなどで遊びたがらなくなった。
  • 尾を下げていることが多くなった。
  • 跛行(※)がある(※足を引きずったり、ケンケンしながら歩くこと。または、足を全く地面に着かずに挙げながら歩くこと)
  • 寝ている時間が長くなった。または短くなった。

また、ケガや手術などで急性の痛みが出た場合、ワンちゃんネコちゃんはそれぞれ以下のような行動を見せることが多いようです。参考にしてください。

【ワンちゃんの場合】

  • 呼吸が早くなる
  • さわると嫌がる
  • イライラして攻撃的になる
  • 食欲が低下する
  • 姿勢がおかしい
  • 跛行など動きに変化がある

【ネコちゃんの場合】

  • 活動性が低下する
  • 耳を寝かせて表情がいつもと違う
  • ずっと横になっている
  • さわると嫌がる、怒る

私の経験でも、ネコちゃんの場合ひたすらじーっとしていることが 多くなりますが、
ワンちゃんの場合はそわそわしたり落ち着きがなくなったりする子もいるようです。

また急性痛の場合は突然暴れたりすることもあります。
以前、日ごろおとなしいネコちゃんが突然夜中に暴れて、どうしたことかと病院に連れて行ったところ、尿道結石が何らかのはずみで膀胱に落ちた後でした(笑)
結石がポロリと落ちた瞬間に激痛が走ったのかもしれないねということでした。

普段のその子の行動、性格を熟知している飼い主さんだからこそ、「いつもと違う!」「おかしい!」と異変にすぐに気がつくことができます。

ワンちゃんネコちゃんの様子に違和感を感じたらすぐに病院に連れて行ってあげてくださいね。
言葉で自分の体調を訴えることができない分、ペットの命綱は私たち飼い主が握っているのです。