ペットと一緒に暮らす私たち飼い主にとって、ワンちゃんは大切な家族の一員です。
ひとつ屋根の下に暮らせば人間同士でも風邪や水虫などの感染症をうつしたりうつされたりということがありますが、
ワンちゃんと人間の間にも共通の感染症があります。
それらを総称して「人畜共通感染症(ズーノーシス)」「動物由来感染症」と呼んでいます。
大好きな愛犬との暮らしをより安全で楽しいものにするために、今回は犬と人間の共通感染症について知っていただきたくて記事にしました。
予防についても詳しくご紹介しますね。

人畜共通感染症とは?

共通感染症とは、動物から人間へ、または人間から動物へ感染する病気のことを指します。
必ずしも動物が由来ではありませんが、動物由来感染症と呼ばれることもあります。
犬をはじめとするペットたちは私たちの健康を脅かす存在ではありませんが、適切な知識と対策がないと、思わぬリスクを招くこともあります。
特に小さな子ども、高齢者、妊婦、免疫力が低下している方は注意が必要ですので、
どんな病気が該当しているか知っておきましょう。
犬から人間に感染する主な病気5選

1. 狂犬病
感染経路 | 犬に咬まれることで感染する |
予防策 | 狂犬病予防接種を毎年必ず受ける |
狂犬病はウイルスによる感染症で、発症するとほぼ100%致死率となる非常に危険な病気です。
世界では今でも年間何万人もの人々が狂犬病で命を落としています。
日本は現在「狂犬病清浄国」に分類されている比較的安全な国で、1957年以降、日本国内で犬の狂犬病の発生はありませんが、海外から持ち込まれた犬や他の動物を介してウイルスが侵入する可能性はゼロではありません。
実際に、海外で感染した人が帰国後に発症したケースが過去に数例あります。
日本では、法律(狂犬病予防法)によって、
- 犬の登録(生涯一度)
- 毎年1回の狂犬病ワクチン接種
が義務付けられています。
現代の日本では全く発生が少ない病気なので、なんでこんなワクチンが必要なの?と思われがちですが、これにより、仮に国内に狂犬病ウイルスが持ち込まれた場合でも、蔓延を防ぐ体制が整えられています。
不測の事態に備えてワクチンはしっかり接種しましょう。
◆ 飼い主さんができること
- 愛犬に必ず年1回、狂犬病ワクチンを接種する
- 海外に犬を連れて行く、または海外から犬を迎える場合は、検疫など法令に従う
- 野犬や野生動物などとは不用意に触れ合わない
2. レプトスピラ症
感染経路 | 尿を通じた接触感染 |
予防策 | ワクチン接種、散歩時の衛生管理 |
レプトスピラ症は、「レプトスピラ」という細菌によって引き起こされる感染症です。
特に温暖で湿った環境(たとえば泥水や水たまり)を好みます。
全世界で発生しており、特に熱帯・亜熱帯地域に多くみられます。
◆ 感染源
- 感染動物(特にネズミや野生動物)の尿 に汚染された水や土壌
- それに直接触れる、またはそれを口にすることで感染します。
- 犬は、泥遊び、水たまりの水を飲む、汚れた場所で遊ぶなどして感染することがあります。
◆ 犬が感染した場合の症状
症状は軽いものから重いものまで幅広いですが、重症化すると命に関わります。
- 発熱
- 食欲不振
- 嘔吐・下痢
- 黄疸(皮膚や目の白い部分が黄色くなる)
- 出血傾向(歯ぐきや皮膚に出血斑)
- 腎臓や肝臓の障害
一部の犬では、無症状で済むこともあります。
◆ 人に感染した場合
人も同様に、
- 発熱
- 筋肉痛
- 頭痛
- 黄疸
- 腎不全・肝不全 といった重い症状を引き起こすことがあります。
人も犬も、重症化すると命に関わることがあるので注意が必要です。
◆ レプトスピラ症の予防方法
- ワクチン接種
犬にはレプトスピラ症に対応した混合ワクチン(通常5種以上)があり、これが有効な予防手段です。 - 不衛生な水たまりや泥遊びを避ける
特に、散歩中に雨上がりの水たまりやぬかるみに入らせないことが大切です。 - 犬の健康管理をしっかり行う
異変を感じたら早めに動物病院へ。 - 飼い主自身も注意
汚染の可能性がある水や土に直接触れた後は、必ず石鹸で手洗いを行いましょう。
3. カプノサイトファーガ感染症
感染経路 | 咬まれる、なめられることで感染 |
予防策 | 傷口の早期消毒、傷ができたらすぐに医師の診察を受ける |
カプノサイトファーガ感染症は、Capnocytophaga という細菌によって引き起こされる感染症です。
この細菌は、犬や猫の口の中に自然に存在していることがあり、通常は動物自身には病気を起こしません。
しかし、人間にうつると、特に免疫力が低下している人では重い症状を引き起こすことがあります。
◆ 感染経路
- 犬や猫に咬まれる、引っかかれる
- 犬や猫に舐められた傷口や粘膜(目、口など)から細菌が侵入 これらが主な感染経路です。
◆ 人での症状
健康な人なら感染しても無症状か、軽い症状で済むことが多いですが、
免疫力が落ちている人(高齢者、糖尿病患者、がん治療中の人など)では次のような重症化が報告されています。
- 発熱、寒気
- 倦怠感
- 発疹
- 吐き気、下痢
- 敗血症(細菌が血液に入り全身に広がる)
- 壊死(指や手足が壊死して切断に至るケースも稀にある)
- 髄膜炎(脳や脊髄の感染)
敗血症を起こした場合、命に関わることもあります。
◆ 犬や猫はどうなの?
犬や猫自身が発症することは基本的にありません。
健康な動物の口の中に「普通に存在している菌」というイメージです。
つまり、動物にとっては問題なくても、人間側がリスクを持っている場合があるのですね。
◆ 予防方法
- 犬や猫に咬まれたり引っかかれたら、すぐに石鹸と流水で十分に洗浄する
- 傷が深い、赤く腫れる、痛みがひどい場合はすぐに医療機関へ
- 特に免疫が弱っている人は、動物と接触する際により注意する
- 舐められた部分(傷や口まわりなど)も早めに洗浄する
- 犬や猫の口の衛生も大切に(歯みがきや定期的な口腔ケア)
4. 皮膚真菌症(リングワーム)
感染経路 | 直接接触または環境を介した感染 |
予防策 | 定期的なシャンプー、犬の皮膚チェック |
皮膚真菌症は、皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)というカビの仲間による感染症です。
特に「リングワーム(Ringworm)」とも呼ばれるタイプは、円形に広がる赤い発疹が特徴的で、その見た目が「リング(輪)」に似ているため、こう呼ばれています。
犬、猫、人、すべてに感染する人獣共通感染症です。
◆ 原因となる真菌(カビ)
代表的なものには、
- Microsporum(ミクロスポルム)属
- Trichophyton(トリコフィトン)属 などがあります。
これらは皮膚、毛、爪などに感染し、かゆみや炎症を引き起こします。
◆ 犬が感染した場合の症状
- 丸い脱毛斑(毛が抜けた円形のハゲ)
- 皮膚が赤くなり、かさぶたやフケが出る
- 軽いかゆみ
- 皮膚の表面がボロボロする感じ
軽症では目立たないこともあり、注意が必要です。
◆ 人が感染した場合の症状
- 赤くて円形に広がる発疹
- かゆみ
- 皮膚が少し盛り上がったり、めくれたりする
特に小さな子どもや免疫力が落ちている人は、広範囲に広がることもあります。
◆ 感染経路
- 感染している犬や猫との直接接触
- 感染動物が使ったタオル、ブラシ、寝具などを介して間接的に感染
- 真菌は環境中でも生き延びるため、掃除や消毒が不十分だと拡がることも!
◆ 予防方法
- 犬や猫の皮膚の健康管理
普段から皮膚や毛をチェックし、異常があれば早めに産へ動物病院へ。 - 感染が疑われたら隔離
感染動物と他のペットや人間との接触をできるだけ避ける。 - こまめな掃除・消毒
特にブラシ、タオル、ケージ、寝具などはしっかり洗って消毒。 - 自分の手も清潔に!
動物と触れ合ったあとは手洗いを徹底する。 - 獣医師による治療
犬が感染した場合、抗真菌薬の内服や外用治療が必要になります。
5. ノミ・ダニを介した病気
感染経路 | ノミ・ダニの咬傷 |
予防策 | 駆虫薬の使用、環境清掃 |
犬に寄生するノミやダニは、犬だけでなく人にも影響を及ぼすことがあります。
直接咬まれてかゆみや炎症を起こすだけでなく、感染症を媒介することもあるため、注意が必要です。
◆ ノミが関与する病気
① ノミ刺咬症(のみしこうしょう)
- ノミに咬まれることで、強いかゆみや発疹が出ます。
- アレルギー体質の人は、ひどいかゆみや湿疹を起こすこともあります。
② ノミ媒介性の感染症
ノミが細菌や寄生虫を運ぶことがあります。
- 猫ひっかき病(バルトネラ感染症)
→ 本来は猫から感染しますが、ノミが媒介することもあります。発熱、リンパ節の腫れなどを起こします。 - 瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)感染症
→ ノミを偶然飲み込んでしまうことで、人にも感染することがあります。消化器症状を引き起こすことがありますが、非常にまれです。
◆ ダニが関与する病気
① マダニ媒介性感染症
マダニは多くの病原体を運びます。咬まれることで次のような感染症を人にうつすことがあります。
- 日本紅斑熱
→ 発熱、発疹、頭痛など。重症化することもあります。 - SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
→ 西日本を中心に報告されている重い感染症で、発熱、下痢、出血傾向を起こし、死亡することもあります。 - ライム病
→ 最初は「遊走性紅斑」という特徴的な発疹が出て、進行すると関節炎や神経症状を起こします。
② 犬疥癬(いぬかいせん)
- 犬に寄生するヒゼンダニ(疥癬ダニ)が人にも一時的に移ることがあります。
- 人に感染すると、非常に強いかゆみと小さな赤い発疹が出ますが、人の皮膚では長く生きられないため、通常は自然に治ります。
◆ ノミ・ダニ対策と予防方法
- 犬への定期的なノミ・ダニ予防薬の投与
(スポットタイプ、飲み薬、首輪など様々な方法があります) - 犬のブラッシングと皮膚チェックをこまめに行う
- 散歩後は犬の体をよく拭く・ダニがついていないか確認する
- 草むらや山林などダニが多い場所では注意
- 家の中の掃除をこまめに(特に犬がよくいる場所)
- 人間自身も肌の露出を減らす(長袖、長ズボン)
- もし咬まれたら、早めに皮膚科や内科に相談する
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犬と人間の健康を守るための予防方法

では、私たちはどのようにして共通感染症から自分自身と愛犬を守れば良いのでしょうか?
大切なのは、「感染リスクを最小限に抑える」ことです。
1. 定期的な健康診断とワクチン接種
必要なワクチンを適切なタイミングで接種しましょう。
狂犬病ワクチンは法律で義務付けられているだけでなく、愛犬を守る大切な手段です。
また、年に1回は動物病院で健康診断を受けるのがおすすめです。
【参考ブログ】ペットの健康診断はとっても大切!受けさせていますか?
2. ノミ・ダニ対策を徹底する
市販薬や動物病院で処方される予防薬を使い、ノミやダニの寄生を防ぎましょう。
特に春から秋にかけては注意が必要です。
また、散歩後には体をしっかりチェックしましょう。
【参考ブログ】マダニは厄介な感染症の媒介者。お散歩のときは対策を!
3. 口腔ケアと皮膚ケア
口腔内に潜む細菌を減らすために、定期的な歯みがきやデンタルケアを行いましょう。
皮膚の状態もこまめにチェックし、異常があればすぐに対処することが大切です。
【参考ブログ】愛犬の口腔ケアは歯みがきだけじゃない。お口の中の歯周病菌を減らそう!
【参考ブログ】愛犬・愛猫のお口がくさい…ペットの口腔ケアを考えよう
4. 適切なスキンシップ
愛犬とのスキンシップは素晴らしい時間ですが、口をなめさせる、食べ物を分け合うなど、感染リスクが高まる行動は避けましょう。
遊んだ後はしっかり手を洗うことも習慣にしましょう。
5. 愛犬の生活環境を清潔に保つ
犬のベッドやおもちゃ、食器はこまめに洗い、清潔な状態を保ちましょう。
室内の掃除や換気も、感染症対策としてとても重要です。
犬との暮らしは人生を豊かにしてくれる楽しいものですよね。
だからこそ、お互いを守るために共通感染症について正しい知識を持ち、
しっかり予防することが大切です。
今年も暖かい季節になってきました。
特にお出かけの際には気をつけてゆきましょう!
